「中小企業の取締役の年収は、どれくらいが妥当なのか?」と調べる人の多くは、単なる平均額だけでなく、自社の規模・役職・利益・従業員給与とのバランスまで含めて、いくらなら不自然ではないのかを知りたいはずです。調べてみると、資本金2,000万円未満の会社では役員報酬の平均が約600万円台というデータがある一方、社長・常務・取締役など役位別に見ると1,000万円を超えるケースもあります。

この記事では、国税庁の民間給与実態統計調査をもとにした資本金別の相場、中小企業を対象にした役位別データ、役員賞与や退職金の目安、さらに「高すぎる役員報酬」が税務上どう見られるのかまで、まとめて整理します。結論からいうと、取締役の年収は相場だけで決めるものではなく、会社の利益・職務内容・従業員給与・税金・社会保険料をセットで見るものです。

この記事のポイント
✅ 中小企業の取締役の年収相場がわかる
✅ 社長・常務・取締役など役位別の違いがわかる
✅ 役員賞与や退職金の考え方がわかる
✅ 高すぎる役員報酬で損しない決め方がわかる
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中小企業の取締役の年収相場と現実

中小企業の取締役の年収相場と現実
  1. 中小企業の取締役の年収は600万円台から1,000万円超まで幅がある
  2. 資本金別では会社規模が大きいほど役員報酬は上がりやすい
  3. 役位別では取締役より社長・会長・常務の年収が高くなりやすい
  4. 従業員数別データは中小企業より大きめの会社として見る必要がある
  5. 業界別では建設業・製造業・IT業で役員年収に差が出やすい
  6. 中小企業の役員賞与の相場は役位と業績で大きく変わる
  7. 役員退職金は在任年数と月額報酬で大きく変動する

中小企業の取締役の年収は600万円台から1,000万円超まで幅がある

【AI】【業務効率化】【職場】中小企業の取締役の年収は600万円台から1,000万円超まで幅がある

中小企業の取締役の年収を調べるとき、まず押さえたいのは「平均値が1つに決まるわけではない」という点です。資本金2,000万円未満の会社全体で見れば、役員報酬の平均は約600万円台とされています。一方で、役位別の調査では、取締役の平均報酬総額が1,000万円を超えるデータもあります。

この差が出る理由は、調査対象が違うためです。国税庁の民間給与実態統計調査は対象数が大きく、小規模会社や報酬が低めの役員も含まれます。一方、日本実業出版社やSMBCコンサルティングが紹介している中小企業の役員報酬調査は、役位別に回答企業を集計しているため、実務上の役職者に近い数字が出やすいと考えられます。

📊 中小企業の役員報酬を見るときの主なデータ

見方 目安 注意点
資本金2,000万円未満の役員平均 約600万円台 小規模法人も多く含む
中小企業の取締役平均報酬総額 約1,100万円台 賞与込みの役位別データ
中小企業の社長平均報酬総額 約2,000万円前後 役職上位のため高く出やすい
役員報酬全体の平均 約800万円前後 大企業も含む場合がある

たとえば、SMBCビジネスクラブ InfoLoungeで紹介されている2025年版の中小企業データでは、取締役の平均報酬総額は1,132.2万円、社長は1,998.0万円とされています。これは、報酬月額だけでなく年間賞与も含めた「報酬総額」です。

参考:SMBCビジネスクラブ InfoLounge
https://infolounge.smbcc-businessclub.jp/articles/1920

つまり、「中小企業の取締役の年収は平均いくら?」という質問への実務的な答えは、小規模会社まで含めた広い平均なら600万円台、役位別の実務感に近い取締役なら1,000万円前後も珍しくないという整理になります。

ただし、ここで注意したいのは、平均値をそのまま自社に当てはめないことです。年商5億円の会社と年商50億円の会社では、同じ中小企業でも資金力が違います。さらに、取締役が実際に経営判断を担っているのか、名義上の役員なのかでも妥当な報酬は変わります。

見るべき順番

優先順位 確認すること 理由
1 自社の利益と資金繰り 払える金額の上限を決めるため
2 取締役の職務内容 報酬の根拠になるため
3 同規模・同業他社の相場 高すぎ・低すぎを避けるため
4 従業員給与とのバランス 組織の納得感に関わるため
5 税金・社会保険料 手取りと会社負担が変わるため

年収だけを見ると「高い・低い」で判断しがちですが、役員報酬は会社にとっては経費であり、個人にとっては所得です。会社側の法人税、個人側の所得税・住民税・社会保険料まで考えると、額面年収だけで得か損かは判断しにくくなります。

中小企業の取締役の年収は、単なる「給与」ではなく、経営責任への対価・税務上の処理・会社の成長資金の配分が重なったものです。したがって、相場はあくまで入口であり、最終的には自社の数字に合わせて決める必要があります。


資本金別では会社規模が大きいほど役員報酬は上がりやすい

【AI】【業務効率化】【職場】資本金別では会社規模が大きいほど役員報酬は上がりやすい

中小企業の取締役年収を考えるうえで、最も使いやすい基準の1つが「資本金別の役員報酬」です。国税庁の民間給与実態統計調査をもとにした複数の解説記事では、資本金が大きい会社ほど役員報酬の平均も高くなる傾向が示されています。

資本金2,000万円未満の会社では役員報酬の平均が約634万円から約661万円とされる一方、資本金2,000万円以上では900万円台から1,000万円前後、5,000万円以上では1,100万円から1,300万円台というデータが紹介されています。調査年や集計対象により多少の差はありますが、傾向としてはかなり一貫しています。

📊 資本金別の役員報酬平均の目安

資本金区分 役員報酬平均の目安 読み方
2,000万円未満 約634万円〜661万円 小規模法人を含む中小企業の入口
2,000万円以上 約940万円〜1,000万円 中小企業でも一定規模
5,000万円以上 約1,147万円〜1,323万円 役員報酬が1,000万円を超えやすい
1億円以上 約1,380万円〜1,458万円 中堅企業に近い水準
10億円以上 約1,946万円〜2,092万円 大企業寄りの水準

参考:株式会社エフアンドエム
https://www.fmclub.jp/blog/zaimu/154
参考:税理士法人植村会計事務所
https://bring-consulting.co.jp/executive-compensation-too-high-for-small-and-medium-sized-enterprises/

この表を見ると、資本金2,000万円未満と5,000万円以上では、役員報酬の平均にかなりの差があります。これは、資本金が大きい会社ほど事業規模も大きく、役員に求められる責任や管理範囲が広がりやすいためと考えられます。

ただし、資本金だけで年収を決めるのは危険です。たとえば、資本金が大きくても赤字が続いている会社で高額な役員報酬を出すと、資金繰りを圧迫するかもしれません。逆に資本金が小さくても、高収益でキャッシュが厚い会社なら、平均より高い役員報酬が不自然とは限りません。

資本金別データの使い方

使い方 内容
相場確認 自社規模と近い区分の平均を見る
税務対策 高すぎる報酬になっていないか確認する
社内説明 役員報酬の根拠資料として使う
報酬改定 前年利益や今期見込みと照らして調整する

特に取締役の年収を1,000万円以上にする場合は、資本金区分だけでなく、利益額・職務内容・他の役員とのバランスも見た方がよいでしょう。税務調査では、同業他社や会社の業績、職務内容などを総合的に見られるとされています。

中小企業の役員報酬は「高ければ悪い」というものではありません。利益を出しており、取締役が経営判断・営業・採用・資金調達などに深く関わっているなら、高めの報酬にも説明がつきます。

一方で、会社に利益がほとんど残らない状態で、資本金区分の平均だけを理由に高額報酬を設定するのは慎重に考えるべきです。役員報酬は毎月の固定支出になるため、売上が落ちたときに資金繰りへ直撃します。

結論として、資本金別の平均は「世間相場を知るための便利な物差し」です。しかし、実際の報酬決定では、資本金よりも利益・キャッシュ・職務内容・従業員給与とのバランスを重視した方が現実的です。


役位別では取締役より社長・会長・常務の年収が高くなりやすい

【AI】【業務効率化】【職場】役位別では取締役より社長・会長・常務の年収が高くなりやすい

「取締役」といっても、会社の中での役位によって年収は大きく違います。会長、社長、副社長、専務、常務、平取締役、社外取締役、執行役員では、責任範囲も勤務実態も異なるためです。

中小企業の場合、社長が実質的な最高責任者であり、営業・採用・資金繰り・投資判断まで担っているケースが多くあります。そのため、取締役の中でも社長の報酬は高くなりやすい傾向があります。

📊 中小企業の役位別報酬総額の目安

役位 平均報酬総額の目安 特徴
会長 約1,993.8万円 創業者や前社長が多い
社長 約1,998.0万円 会社全体の責任を負う
副社長・専務 約1,602.8万円 社長補佐や主要部門を担当
常務 約1,475.5万円 特定部門の責任者になりやすい
取締役 約1,132.2万円 執行役員や使用人兼務を含む場合あり

参考:SMBCビジネスクラブ InfoLounge
https://infolounge.smbcc-businessclub.jp/articles/1920

このデータでは、取締役の平均報酬総額は約1,132万円です。資本金別の平均より高く見えますが、これは「役位別に回答された中小企業データ」であり、年間賞与も含むためです。したがって、小規模法人全体の平均とは性格が違います。

また、BNGパートナーズの記事では、ポジション別の目安として、代表取締役は約1,000万〜2,500万円、専務取締役は800万〜1,500万円、常務取締役は700万〜1,200万円、執行役員は600万〜1,000万円程度とされています。

📌 役位別のざっくりレンジ

役位 年収レンジの目安 読み方
代表取締役社長 1,000万〜2,500万円程度 会社全体の成果に連動しやすい
専務取締役 800万〜1,500万円程度 社長に近い経営責任
常務取締役 700万〜1,200万円程度 部門管理の色が強い
社外取締役 300万〜800万円程度 非常勤なら低めになりやすい
執行役員 600万〜1,000万円程度 取締役ではない場合もある

参考:BNGパートナーズ
https://bngpartners.jp/date/350/

ここで大事なのは、肩書きだけでなく実際の仕事を見ることです。たとえば「取締役営業部長」のような使用人兼務役員であれば、役員としての責任と従業員としての職務が混ざります。大塚商会の記事でも、使用人兼務役員には税務上の要件があると説明されています。

参考:大塚商会
https://mypage.otsuka-shokai.co.jp/contents/business-oyakudachi/expert-keiri-kyuyo/2013/201305.html

役位別に年収を決めるときの確認項目

確認項目 見るべき理由
会社全体の責任を負っているか 社長・代表取締役は高くなりやすい
部門責任があるか 常務・専務の報酬根拠になる
常勤か非常勤か 社外取締役は低めになりやすい
使用人兼務か 給与と役員報酬の区分が関係する
実際に職務を果たしているか 名義だけの役員報酬はリスクがある

中小企業では、家族が取締役になっているケースもあります。この場合も、実際に経営・経理・営業・採用などに関わっているかどうかが重要です。勤務実態がないのに高額な報酬を支払うと、税務上指摘される可能性があります。

したがって、取締役の年収を決めるときは、「社長はいくら、常務はいくら」と機械的に決めるのではなく、役位・職務内容・勤務実態・会社への貢献度をセットで整理しましょう。


従業員数別データは中小企業より大きめの会社として見る必要がある

【AI】【業務効率化】【職場】従業員数別データは中小企業より大きめの会社として見る必要がある

従業員数別の役員報酬データもありますが、中小企業の取締役年収を考えるときには注意が必要です。なぜなら、公開されている従業員数別データの多くは、500人以上など比較的大きな会社を対象にしているからです。

人事院の「民間企業における役員報酬(給与)調査」では、企業規模500人以上の会社が対象とされています。このデータでは、500人以上1,000人未満の会社でも社長の平均年間報酬が4,225.5万円、常務が2,154.4万円、専任取締役が1,836.6万円など、かなり高い水準になります。

📊 従業員数500人以上の役員報酬データの例

役位 500人以上1,000人未満の平均年間報酬
社長 4,225.5万円
副社長 3,510.6万円
専務 2,543.4万円
常務 2,154.4万円
専任取締役 1,836.6万円
部長等兼任 1,707.7万円

参考:役員報酬.com
https://yakuin-hoshu.com/data/market-price/

この数字だけを見ると、「中小企業の取締役でも1,800万円くらいが普通なのか」と感じるかもしれません。しかし、500人規模の会社は、多くの中小企業よりかなり大きい組織です。年商や管理範囲も大きいため、20人〜100人規模の中小企業にそのまま当てはめるのは無理があります。

一方で、日本実業出版社の中小企業向け調査では、従業員数20名以下、21〜50名、51〜100名、101〜300名など、より細かい規模区分が使われています。役員報酬.comでも、同調査について、社長の月額報酬の中位額が20名以下で70万円、21〜50名で89.4万円、51〜100名で113.5万円、101〜300名で154.2万円と紹介されています。

📌 中小企業に近い従業員規模別の社長月額報酬中位額

従業員規模 社長の月額報酬中位額 年額換算の目安
20名以下 70万円 840万円
21〜50名 89.4万円 1,072.8万円
51〜100名 113.5万円 1,362万円
101〜300名 154.2万円 1,850.4万円

参考:役員報酬.com
https://yakuin-hoshu.com/data/market-price/

この表の方が、一般的な中小企業には近い感覚で使いやすいでしょう。ただし、これは社長の月額報酬の中位額です。取締役の場合は、社長より低めになるケースが一般的です。

従業員数別データを見るときの注意点

注意点 内容
500人以上データは高めに出る 中小企業でもかなり大規模な会社に近い
月額と年収を混同しない 賞与の有無で総額が変わる
社長と取締役を分ける 社長報酬を平取締役に当てはめない
中位額と平均値を分ける 高額回答が平均を押し上げることがある

従業員数は、役員報酬の妥当性を見るうえで役立ちます。従業員10人の会社と100人の会社では、取締役が管理する人数も責任範囲も違います。従業員数が増えるほど、組織管理・採用・労務・財務・事業戦略の難易度も上がりやすくなります。

ただし、人数が多いだけで高い報酬が正当化されるわけではありません。赤字や資金繰り難がある場合、従業員数が多くても高額な役員報酬は慎重に考える必要があります。

結局のところ、従業員数別データは「自社の規模感に近い会社を探すための補助線」です。中小企業の取締役年収を決める際は、従業員数だけでなく、利益率・業界・職務内容・会社に残す資金まで一緒に見ましょう。


業界別では建設業・製造業・IT業で役員年収に差が出やすい

【AI】【業務効率化】【職場】業界別では建設業・製造業・IT業で役員年収に差が出やすい

中小企業の取締役年収は、業界によっても変わります。理由は、業界ごとに利益率、売上規模、資本集約度、人材獲得競争、成長性が異なるためです。

BNGパートナーズの記事では、製造業・建設業・サービス業・IT業・広告業などの役員年収レンジが紹介されています。特に建設業や製造業では、設備投資や長期案件を扱うことが多く、役員報酬も比較的高めに出る傾向があります。一方、サービス業では企業ごとの収益性に差があり、年収レンジにも幅が出やすいと考えられます。

📊 業界別・役員年収レンジの一例

業界 代表取締役の年収目安 常務取締役の年収目安 執行役員の年収目安
製造業 1,200万〜2,000万円 800万〜1,500万円 600万〜1,200万円
建設業 1,500万〜2,500万円 1,000万〜1,800万円 700万〜1,300万円
サービス業 800万〜1,500万円 600万〜1,000万円 500万〜900万円
IT業界 1,000万〜2,000万円 700万〜1,500万円 600万〜1,200万円
広告業界 900万〜1,800万円 600万〜1,200万円 500万〜1,000万円

参考:BNGパートナーズ
https://bngpartners.jp/date/350/

この表はあくまで目安ですが、自社の業界感と照らし合わせるには便利です。たとえば、建設業で年商が大きく、複数現場や許認可、人材管理、資金繰りを取締役が担っている場合、他業種より高めの報酬になっても説明しやすいかもしれません。

一方で、サービス業や広告業などは、案件単価や利益率、人件費比率によって大きく差が出ます。売上が大きくても利益が薄い業態では、役員報酬を高くしすぎると資金繰りを圧迫しやすくなります。

業界別に見た報酬判断のポイント

業界タイプ 報酬を見るポイント
建設業 案件規模、資金繰り、現場責任、許認可対応
製造業 設備投資、原価管理、生産管理、取引先依存度
IT業 利益率、採用競争、技術責任、成長投資
サービス業 人件費比率、店舗数、顧客単価、継続収益
広告業 案件変動、粗利率、営業力、外注費

また、IT業や広告業では、固定資産よりも人材やノウハウが収益の源泉になりやすいため、役員が営業・戦略・採用・プロダクト開発を兼ねることがあります。この場合、単なる役職手当ではなく、事業成長への貢献度を報酬に反映する考え方もあります。

ただし、業界別レンジを使うときも「高い側だけ」を見るのは避けましょう。たとえば、IT業界の代表取締役が2,000万円まであるからといって、利益が十分でない会社が2,000万円に設定すると、会社に残る資金が不足する可能性があります。

📌 業界別データの使い方

目的 使い方
高すぎチェック 同業の上限レンジを超えていないか見る
低すぎチェック 責任に対して極端に低くないか見る
採用・登用 外部役員を迎える際の提示額に使う
社内説明 役員報酬の根拠資料にする

業界別の役員年収は、報酬を決めるうえで有効な材料です。ただし、最終的には、同業であることよりも、自社の利益率・資金繰り・成長投資の必要性を優先して考える方が現実的です。


中小企業の役員賞与の相場は役位と業績で大きく変わる

【AI】【業務効率化】【職場】中小企業の役員賞与の相場は役位と業績で大きく変わる

関連検索でも気にされやすいのが、「中小企業の役員賞与の相場は?」という点です。役員報酬は毎月の定額報酬だけでなく、賞与を含めて考える必要があります。ただし、役員賞与は従業員のボーナスと同じ感覚で自由に出せるものではありません。

役員賞与を損金にするには、原則として「事前確定届出給与」の手続きが必要です。これは、あらかじめ支給日と金額を税務署へ届け出て、その通りに支給する仕組みです。金額や支給日がズレると、損金として認められない可能性があります。

📊 中小企業の役位別・年間賞与の平均例

役位 年間賞与の平均 報酬総額の平均
会長 491.6万円 1,993.8万円
社長 497.9万円 1,998.0万円
副社長・専務 418.4万円 1,602.8万円
常務 297.2万円 1,475.5万円
取締役 258.4万円 1,132.2万円

参考:SMBCビジネスクラブ InfoLounge
https://infolounge.smbcc-businessclub.jp/articles/1920

この表を見ると、中小企業の取締役でも、賞与を含めると年収が大きく変わることがわかります。取締役の平均年間賞与は258.4万円とされており、月額報酬だけで年収を判断すると実態とズレる場合があります。

ただし、賞与は会社の利益が出たからといって、その場で自由に上乗せできるものではありません。通常の役員賞与を損金にしたい場合は、事前確定届出給与として、期首から一定期間内に届け出る必要があります。

役員賞与を考えるときのチェック表

項目 確認内容
事前届出 支給日・金額を税務署へ届け出ているか
支給額 届け出た金額と一致しているか
支給日 届け出た日付と一致しているか
業績 賞与を払っても資金繰りに問題ないか
従業員賞与 従業員とのバランスに違和感がないか

L&Bヨシダ税理士法人の記事でも、事前確定届出給与は「株主総会等の決議をした日から1カ月以内」または「会計期間開始から4カ月以内」のどちらか早い日までに届け出ると説明されています。

参考:L&Bヨシダ税理士法人
https://houjin-kessan.yoshida-zeimu.jp/president-salary

また、業績連動給与という考え方もありますが、中小企業、とくに同族会社では要件が厳しく、使いにくい場合があります。したがって、多くの中小企業では、毎月の定期同額給与を基本にし、賞与を出すなら事前確定届出給与を検討する形が現実的です。

役員賞与の相場は、役位や会社規模によって大きく違います。社長や会長では400万〜500万円前後の平均が紹介されていますが、これは回答企業の平均であり、すべての中小企業に当てはまるわけではありません。

取締役賞与を決める場合は、単に「平均が258万円だから同じにする」のではなく、今期の利益見込み、会社に残す資金、従業員賞与、届出手続きをセットで判断しましょう。特に資金繰りが不安定な会社では、賞与よりも月額報酬を安定させる方が管理しやすいこともあります。


役員退職金は在任年数と月額報酬で大きく変動する

【AI】【業務効率化】【職場】役員退職金は在任年数と月額報酬で大きく変動する

中小企業の取締役年収を考えるなら、現役時代の報酬だけでなく、役員退職金も見ておくと全体像がつかみやすくなります。役員退職金は、通常の従業員退職金よりも金額が大きくなりやすく、在任年数や最終報酬月額、役位によって変わります。

SMBCビジネスクラブ InfoLoungeの2025年版データでは、役員退職金の平均支給額として、社長が3,659.0万円、取締役が1,234.7万円と紹介されています。もちろん、最高値と最低値には大きな差があります。

📊 中小企業の役位別・役員退職金の平均例

役位 平均支給額 通算役員在任期間の平均 退職時報酬月額の平均
会長 4,820.6万円 28.8年 125.3万円
社長 3,659.0万円 14.9年 119.4万円
副社長・専務 2,441.0万円 14.5年 106.5万円
常務 1,604.7万円 12.5年 88.4万円
取締役 1,234.7万円 11.2年 81.0万円

参考:SMBCビジネスクラブ InfoLounge
https://infolounge.smbcc-businessclub.jp/articles/1920

役員退職金の計算方法としてよく使われるのが「功績倍率法」です。これは、退任時の報酬月額に在任年数と功績倍率を掛ける考え方です。

📌 役員退職金の代表的な計算方法

計算方法 内容
功績倍率法 退任時の報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率
役位別算定方式 役位ごとに月額・在任年数・倍率を積み上げる
1年あたり平均額法 類似企業の1年あたり退職金額 × 在任年数

株式会社エフアンドエムの記事でも、役員退職金の計算方法として功績倍率法、役位別算定方式、1年あたり平均額法が紹介されています。

参考:株式会社エフアンドエム
https://www.fmclub.jp/blog/zaimu/154

ただし、役員退職金も「いくらでも自由」というわけではありません。過大な役員退職金は、税務上否認される可能性があります。特に、退職の実態がないのに退職金を支払うようなケースは注意が必要です。

役員退職金を準備する主な方法

方法 特徴
預金・有価証券 自由度は高いが計画性が必要
小規模企業共済 小規模事業者向けの退職準備に使われる
中小企業倒産防止共済 資金準備やリスク対応に使われることがある
企業型確定拠出年金 制度設計が必要
法人生命保険 契約内容と税務処理の確認が必要

役員退職金を考えると、現役時代の年収をむやみに上げず、会社に資金を残しながら退職金で受け取る設計も選択肢になります。ただし、制度や税務の扱いは複雑なため、顧問税理士などに確認した方がよいでしょう。

中小企業の取締役にとって、年収と退職金はセットで考えるべきテーマです。毎年の役員報酬を高くしすぎると会社に資金が残りにくくなります。一方で、報酬を抑えすぎると生活やモチベーションに影響するかもしれません。

したがって、取締役の報酬設計では、月額報酬・賞与・退職金・会社に残す資金をまとめて考えることが重要です。

ふるさと納税のポイント付与は2025年10月に廃止になりました。

中小企業の取締役の年収を決める基準と注意点

【AI】【業務効率化】【職場】役員退職金は在任年数と月額報酬で大きく変動する
  1. 取締役の年収は生活費や前職年収だけで決めないこと
  2. 役員報酬は事業年度開始から3カ月以内に決めるのが基本
  3. 高すぎる役員報酬は損金算入を否認されるリスクがある
  4. 従業員給与との差を広げすぎないことが組織の納得感につながる
  5. 税金と社会保険料を含めた手取りで判断することが重要
  6. 配当や社宅など報酬以外の受け取り方も検討余地がある
  7. 名義だけの家族役員や実態のない報酬は避けるべき
  8. 総括:取締役 年収 中小企業のまとめ

取締役の年収は生活費や前職年収だけで決めないこと

【AI】【業務効率化】【職場】取締役の年収は生活費や前職年収だけで決めないこと

中小企業の取締役年収を決めるとき、よくある失敗が「自分の生活費から逆算する」「前職の給与をそのまま使う」「とりあえず0円にする」という決め方です。どれも一見わかりやすいのですが、会社経営の基準としては不安が残ります。

たとえば、生活費が月60万円だから役員報酬も月60万円にする、という決め方はシンプルです。しかし、会社の利益が不安定な時期には、固定費として重くのしかかります。役員報酬は毎月の支払いになるため、売上が落ちたときに資金繰りを圧迫する可能性があります。

📌 避けたい役員報酬の決め方

決め方 なぜ注意が必要か
生活費から逆算する 会社の利益や資金繰りを無視しやすい
前職年収をそのまま使う 今の会社規模と合わない可能性がある
0円にする 生活・信用・社会保険で問題が出ることがある
税金だけで決める 会社成長や従業員感情を見落としやすい
周囲の経営者の話だけで決める 業種・利益率・規模が違う場合が多い

株式会社エフアンドエムの記事でも、生活費をもとに算出する、前職給与をスライドさせる、0円で設定することはNG例として紹介されています。

参考:株式会社エフアンドエム
https://www.fmclub.jp/blog/zaimu/154

前職年収を基準にするのも注意が必要です。大企業で年収1,200万円だった人が、中小企業の取締役になったからといって、同じ水準をすぐに設定できるとは限りません。大企業と中小企業では、利益構造も資金力も違うからです。

また、役員報酬0円も一見すると会社に資金を残せるように見えます。しかし、役員本人の生活費や信用、社会保険、金融機関からの見え方を考えると、必ずしも良いとはいえません。税理士法人植村会計事務所の記事でも、0円設定には法人税負担の増加や生活費確保、信用面などの注意点があるとされています。

📊 報酬決定で見るべき4つの軸

確認すること
会社の数字 売上、粗利、営業利益、資金繰り
役員の役割 経営判断、営業、採用、財務、現場責任
社内バランス 従業員給与、他役員報酬、賞与
税務・社会保険 法人税、所得税、住民税、社会保険料

おすすめは、まず会社の利益計画から逆算する方法です。今期どれくらい利益を残したいのか、採用や設備投資にいくら使うのか、借入返済にどれくらい必要かを見たうえで、役員報酬の上限を決めます。

そのうえで、同規模・同業の相場や従業員給与とのバランスを確認します。これにより、「自分が欲しい金額」ではなく、「会社として説明できる金額」になります。

現実的な決め方

ステップ 内容
1 今期の利益見込みを出す
2 会社に残す資金を決める
3 従業員給与・賞与の方針を見る
4 役員の職務内容を整理する
5 税金・社会保険料を試算する
6 株主総会・議事録など手続きを整える

中小企業の取締役年収は、個人の希望だけで決めるものではありません。会社に利益を残し、従業員にも納得感があり、税務署にも説明できる金額にすることが重要です。


役員報酬は事業年度開始から3カ月以内に決めるのが基本

【AI】【業務効率化】【職場】役員報酬は事業年度開始から3カ月以内に決めるのが基本

中小企業の取締役年収を決めるとき、相場と同じくらい大事なのが「いつ決めるか」です。役員報酬は、原則として事業年度開始から3カ月以内に決める必要があります。ここを外すと、税務上の扱いで不利になる可能性があります。

役員報酬を損金にする代表的な方法が「定期同額給与」です。これは、毎月同じ時期に同じ金額を支払う役員報酬のことです。たとえば、毎月50万円を取締役に支給すると決めたら、原則としてその事業年度中は同じ金額で支給し続けます。

📌 役員報酬の主な支払い方法

種類 内容 注意点
定期同額給与 毎月同じ金額を支払う 期中変更に注意
事前確定届出給与 事前に届け出た賞与など 金額・日付のズレに注意
業績連動給与 業績に応じて支払う 中小企業では要件が厳しい場合がある

大塚商会の記事でも、定期同額給与や事前確定届出給与など、損金算入が認められる役員給与の考え方が説明されています。

参考:大塚商会
https://mypage.otsuka-shokai.co.jp/contents/business-oyakudachi/expert-keiri-kyuyo/2013/201305.html

事業年度開始から3カ月を過ぎたあとに役員報酬を増額すると、その増額部分が損金として認められない可能性があります。減額の場合も、業績悪化など一定の理由がないと、税務上問題になることがあります。

📊 役員報酬変更のタイミング

タイミング 原則の扱い
事業年度開始から3カ月以内 通常改定として認められやすい
3カ月経過後の増額 増額分が損金不算入になる可能性
3カ月経過後の減額 業績悪化など理由が必要な場合がある
届出済み賞与の変更 事前確定届出給与の要件に注意

石黒健太税理士事務所の記事でも、役員報酬の変更は事業年度開始から3カ月以内が原則であり、定期同額給与の要件や株主総会・取締役会での決議が重要だと説明されています。

参考:石黒健太税理士事務所
https://ishiguro-tax.jp/blog/8456/

また、役員報酬を決めたら、株主総会や取締役会の議事録を残すことも大切です。中小企業では社長が1人で決めている感覚になりやすいですが、税務調査では「いつ、どのような手続きで決めたか」が確認されることがあります。

報酬決定時に残したい記録

記録 内容
株主総会議事録 役員報酬の総額や決議内容
取締役会議事録 個別支給額を決めた内容
報酬改定資料 改定理由、会社業績、相場資料
資金繰り表 支払い可能性の確認
税理士との相談記録 専門家確認の証跡

特に家族経営や一人会社の場合、「自分の会社だから自由に決めてよい」と考えがちです。しかし、法人と個人は別人格です。役員報酬を会社の損金にするには、税法上のルールに沿って処理する必要があります。

事業年度開始直後は、前期決算の確認、今期の利益予測、資金繰り、従業員給与の方針を見直すタイミングです。この時期に役員報酬も一緒に決めると、税務上も管理上もスムーズになります。


高すぎる役員報酬は損金算入を否認されるリスクがある

【AI】【業務効率化】【職場】高すぎる役員報酬は損金算入を否認されるリスクがある

中小企業の取締役年収で特に注意したいのが、「高すぎる役員報酬」です。役員報酬は会社の経費として扱える場合がありますが、不相当に高額な部分は損金算入が認められない可能性があります。

税理士法人植村会計事務所の記事では、法人税法上、不相当に高額な役員報酬は損金算入されないと説明されています。高すぎるかどうかは、役員の職務内容、会社の業績、従業員の給与水準、同業他社の役員報酬額などを総合的に見て判断されるとされています。

参考:税理士法人植村会計事務所
https://bring-consulting.co.jp/executive-compensation-too-high-for-small-and-medium-sized-enterprises/

📌 高すぎる役員報酬で見られやすいポイント

見られる項目 内容
職務内容 実際に経営判断をしているか
会社の業績 利益に対して報酬が大きすぎないか
従業員給与 社員との格差が大きすぎないか
同業他社 同規模・同業と比べて不自然でないか
支給手続き 期首3カ月以内の決定や議事録があるか

たとえば、会社の経常利益が数百万円しかないのに、取締役報酬を数千万円に設定している場合、説明が難しくなるかもしれません。逆に、安定して高い利益を出し、取締役が主要な経営判断を担っているなら、高めの報酬でも合理性を説明しやすくなります。

また、税務調査で役員報酬が否認されると、法人税の追加負担が発生する可能性があります。場合によっては、修正申告や追徴課税につながることもあります。

📊 高額報酬のリスク整理

リスク 会社への影響 個人への影響
損金不算入 法人税負担が増える 間接的に資金繰り悪化
税務調査対応 資料準備・説明が必要 報酬根拠を問われる
資金繰り圧迫 投資・採用資金が減る 報酬継続が難しくなる
社内不満 従業員の士気低下 経営者への不信感

「役員報酬は高いほど節税になる」と考える人もいます。たしかに、役員報酬を増やすと会社の利益は減り、法人税は下がる場合があります。しかし、個人側では所得税・住民税・社会保険料が増えます。さらに、高すぎると税務上のリスクも出ます。

高すぎを避けるための考え方

判断軸 目安
利益との関係 報酬を払っても黒字や資金余力が残るか
売上との関係 売上の一定割合に収まっているか
社員給与との関係 平均給与との差が説明できるか
同業比較 同規模他社とかけ離れていないか
将来投資 採用・設備・広告費を削っていないか

税理士法人植村会計事務所の記事では、売上に対する役員報酬の比率について、明確な基準はないものの、一般的には売上の3〜10%程度を役員報酬とするケースが多く、年間利益の20%以内が妥当とされる説明もあります。ただし、これはあくまで目安であり、業種や利益率によって変わります。

高い役員報酬そのものが悪いわけではありません。問題は、会社の実態に対して説明できないほど高いことです。中小企業の取締役年収を決めるときは、「なぜこの金額なのか」を資料で説明できる状態にしておきましょう。


従業員給与との差を広げすぎないことが組織の納得感につながる

【AI】【業務効率化】【職場】従業員給与との差を広げすぎないことが組織の納得感につながる

中小企業の取締役年収は、従業員給与とのバランスも重要です。税務上の問題だけでなく、組織の信頼関係に関わるからです。特に中小企業では、社長や取締役と従業員の距離が近いため、報酬格差への違和感が見えやすくなります。

もちろん、取締役は会社の経営責任を負うため、従業員より年収が高くなるのは自然です。資金調達、採用、取引先対応、投資判断、法務・労務リスクなど、従業員とは違う責任があります。ただし、その差が大きすぎると不公平感につながることがあります。

📌 従業員給与とのバランスで見たい項目

項目 見る理由
従業員の平均年収 社内の標準水準を把握する
最低年収層 格差が大きすぎないか見る
賞与の有無 役員だけ賞与が厚くないか見る
昇給率 会社の成長配分を確認する
離職率 報酬不満が出ていないか見る

L&Bヨシダ税理士法人の記事では、従業員の給与とのバランスで社長の給与を決める方法として、役員報酬全体が従業員給与の20倍を超えると不満がたまりやすいという考え方が紹介されています。

参考:L&Bヨシダ税理士法人
https://houjin-kessan.yoshida-zeimu.jp/president-salary

また、税理士法人植村会計事務所の記事では、従業員の平均年収の5倍以上の役員報酬を支給する場合、従業員の士気が低下するおそれがあると説明されています。どちらも絶対的なルールではありませんが、社内バランスを見る参考になります。

📊 従業員給与との比較例

従業員平均年収 役員年収 倍率 見方
400万円 800万円 2倍 説明しやすい範囲
400万円 1,200万円 3倍 職務内容次第で妥当
400万円 2,000万円 5倍 根拠説明が重要
400万円 4,000万円 10倍 利益・役割・社内感情に注意

ただし、倍率だけで判断するのも危険です。たとえば、会社を創業し、借入保証や営業責任を負い、主要取引先も自ら開拓している社長であれば、従業員より高い報酬になる合理性があります。一方、実務にほとんど関わっていない名義上の取締役が高額報酬を受ける場合は、説明が難しいでしょう。

納得感を高める報酬設計

方法 内容
会社業績と連動させる 利益が出た年に役員・社員双方へ還元
従業員賞与も確保する 役員だけが増えすぎないようにする
役割を明確にする 取締役が何を担うかを明文化する
昇給方針を整える 社員の成長にも報酬で応える
投資資金を残す 採用・設備・教育を削らない

中小企業では、従業員が会社の財務状況を完全に知っているわけではありません。しかし、役員だけが大きく報酬を取っているように見えると、信頼が揺らぐことがあります。

取締役の年収を決めるときは、税務署に説明できるだけでなく、従業員にも「会社の成長に必要な範囲」として納得される水準を意識しましょう。結果的に、その方が採用・定着・生産性にも良い影響を与えやすくなります。


税金と社会保険料を含めた手取りで判断することが重要

【AI】【業務効率化】【職場】税金と社会保険料を含めた手取りで判断することが重要

取締役の年収を決めるとき、額面だけで判断すると失敗しやすくなります。なぜなら、年収が上がるほど、所得税・住民税・社会保険料の負担も増えるからです。会社側にも社会保険料の負担があるため、個人の手取りだけでなく会社の総負担も見る必要があります。

石黒健太税理士事務所の記事では、年収1,000万円、2,000万円、3,000万円の手取りシミュレーションが紹介されています。条件によって変わりますが、年収が上がるほど税金と社会保険料の負担割合は高くなる傾向があります。

📊 役員報酬の手取りシミュレーション例

額面年収 税金・社会保険料後の手取り目安 負担割合の目安
1,000万円 約725万円 約27.5%
2,000万円 約1,299万円 約35%
3,000万円 約1,782万円 約41%

参考:石黒健太税理士事務所
https://ishiguro-tax.jp/blog/8456/

この表を見ると、年収1,000万円から2,000万円に増えても、手取りは単純に2倍にはなりません。さらに3,000万円になると、税金や社会保険料の負担がかなり大きくなります。

役員報酬は会社の損金になるため、法人税を下げる効果があります。しかし、個人側で所得税や住民税が増えれば、法人・個人トータルで見たときに必ず得とは限りません。

📌 額面年収だけで判断しない理由

理由 内容
所得税は累進課税 所得が高いほど税率が上がる
住民税もかかる 一般的に所得に対して負担が発生する
社会保険料が増える 会社負担分も増える
法人税とのバランス 会社に残すか個人で取るかで変わる
資金繰りへの影響 毎月の固定支出になる

税理士法人植村会計事務所の記事でも、役員報酬を多くすると法人税の負担は軽減できる一方、個人の所得税・住民税・社会保険料の負担は重くなると説明されています。

報酬設定で試算したい項目

試算項目 見るべきポイント
個人の手取り 実際に生活に使える金額
会社負担の社会保険料 会社の総支出を把握する
法人税 会社に利益を残した場合の税額
住民税 翌年の負担も確認する
キャッシュ残高 報酬支払い後に資金が残るか

たとえば、年収を2,000万円にした場合と1,500万円にした場合で、個人の手取り差、会社の税負担差、会社に残る資金を比較します。そのうえで、会社に残した資金を広告・採用・設備・借入返済に使った方がよいのか、個人で受け取った方がよいのかを考えます。

役員報酬は、単なる「年収アップ」ではありません。法人と個人の財布をどう分けるかという経営判断です。中小企業の取締役年収は、額面ではなく、手取り・会社負担・将来投資まで含めた総合判断が必要です。


配当や社宅など報酬以外の受け取り方も検討余地がある

【AI】【業務効率化】【職場】配当や社宅など報酬以外の受け取り方も検討余地がある

中小企業の取締役が会社から受け取るお金は、役員報酬だけではありません。株主でもある場合は配当を受け取る方法があります。また、社宅や業務上必要な経費など、報酬とは別の形で経済的メリットが生じる場合もあります。

まず配当についてです。役員報酬は会社の損金になりますが、配当は会社の損金にはなりません。一方で、配当には社会保険料がかからないという違いがあります。そのため、役員報酬と配当のバランスを検討することで、手取りや会社負担が変わる可能性があります。

📊 役員報酬と配当の違い

項目 役員報酬 配当
会社の損金 原則、要件を満たせば損金 損金にならない
個人の所得区分 給与所得 配当所得
社会保険料 対象になる 原則対象外
支給の安定性 毎月定額が基本 利益配分として実施
税務手続き 定期同額給与などの要件 配当手続きが必要

株式会社エフアンドエムの記事でも、役員報酬以外に配当金で収入を得る方法が紹介され、配当金には税金がかかることや、配当は経費として扱われない点が説明されています。

参考:株式会社エフアンドエム
https://www.fmclub.jp/blog/zaimu/154

ただし、配当が常に有利とは限りません。会社側では損金にならないため、法人税を支払った後の利益から配当することになります。また、株主構成によっては、特定の役員だけに自由に配当することが難しい場合もあります。

次に社宅です。役員社宅は、適切に設計すれば会社の経費として扱える部分が出る可能性があります。しかし、家賃なしや極端に安い賃料で貸すと、役員賞与とみなされる可能性があります。大塚商会の記事でも、役員への社宅貸与について、家賃設定に注意が必要だと説明されています。

📌 報酬以外で検討されやすいもの

種類 メリット 注意点
配当 社会保険料の対象外になりやすい 会社の損金にならない
役員社宅 住居費負担を調整できる場合がある 適正家賃が必要
旅費・交際費 業務上必要なら経費化の余地 私的支出との区分が必要
退職金 長期的な受け取り設計ができる 過大額は否認リスク
法人保険 退職金準備などに使われることがある 商品設計と税務確認が必要

注意したいのは、報酬以外の受け取り方を「抜け道」と考えないことです。実態がない経費や、私的な支出を会社経費にすることは、税務調査で問題になる可能性があります。

検討するときの判断基準

判断基準 内容
業務実態があるか 会社の事業に必要な支出か
書類が残っているか 契約書、議事録、領収書など
税務上の要件を満たすか 損金算入や課税関係を確認
社内説明できるか 従業員や他役員に不自然でないか
長期的に続けられるか 一時的な節税目的になっていないか

取締役の年収を考えるときは、月額報酬だけでなく、賞与、配当、社宅、退職金まで含めて全体設計をするとよいでしょう。ただし、それぞれ税務上の扱いが異なるため、顧問税理士に確認しながら進めるのが現実的です。


名義だけの家族役員や実態のない報酬は避けるべき

【AI】【業務効率化】【職場】名義だけの家族役員や実態のない報酬は避けるべき

中小企業では、配偶者や子どもを取締役にして役員報酬を支払うケースがあります。家族経営では自然なこともありますが、勤務実態や職務内容がないまま報酬だけを支給するのは避けるべきです。

大塚商会の記事では、妻や子どもを役員にする場合でも、経営者としての職務を遂行していないにもかかわらず役員報酬だけを支給することはできないと説明されています。たとえば、大学生の子どもを監査役にして報酬を出すようなケースでは、否認される可能性があります。

参考:大塚商会
https://mypage.otsuka-shokai.co.jp/contents/business-oyakudachi/expert-keiri-kyuyo/2013/201305.html

📌 家族役員で確認されやすいポイント

項目 確認内容
勤務実態 実際に仕事をしているか
職務内容 経理、労務、営業、管理などの役割があるか
報酬額 職務内容に見合っているか
出勤・業務記録 客観的な証拠があるか
他の従業員との比較 不自然に高額でないか

家族役員への報酬は、所得分散として税負担の軽減につながる場合があります。税理士法人植村会計事務所の記事でも、家族へ役員報酬を支給して所得を分散すれば税負担の軽減が期待できるケースがある一方、勤務実態のない家族への支給は税務署に指摘されるおそれがあると説明されています。

📊 家族役員報酬の良い例・悪い例

ケース 見方
配偶者が経理・労務を継続担当 報酬根拠を説明しやすい
子どもが営業や制作を実際に担当 実態があれば検討余地あり
名前だけ役員で業務なし 否認リスクが高い
未成年で職務遂行が難しい 説明が難しい場合がある
報酬だけ高く勤務記録なし 税務上のリスクがある

また、使用人兼務役員にも注意が必要です。大塚商会の記事では、使用人兼務役員として認められるには、代表取締役や専務・常務・監査役などではないこと、職制上の部長や課長などであること、実際にその職務を遂行していることなどが説明されています。

実態を残すための資料

資料 内容
業務分掌表 役員ごとの担当業務を明確にする
出勤記録 実際に勤務している証拠
会議議事録 経営判断への関与を残す
メール・業務記録 日常業務の実態を示す
報酬決定議事録 金額の根拠を残す

家族役員に報酬を出すこと自体が悪いわけではありません。問題は、職務内容や勤務実態に対して報酬が不自然な場合です。中小企業では家族が重要な役割を担っているケースも多いため、実態があるなら、その内容をきちんと記録しておきましょう。

取締役の年収は、肩書きではなく実態で見られます。名義だけの取締役に高額報酬を出すのではなく、誰が何を担当し、どの程度会社に貢献しているのかを明確にすることが大切です。


総括:取締役 年収 中小企業のまとめ

【AI】【業務効率化】【職場】総括:取締役 年収 中小企業のまとめ

最後に記事のポイントをまとめます。

  1. 中小企業の取締役の年収は、広い平均では600万円台、役位別では1,000万円超もある。
  2. 資本金2,000万円未満の役員報酬平均は約600万円台である。
  3. 資本金が大きい会社ほど、役員報酬の平均は上がりやすい。
  4. 取締役よりも、社長・会長・専務・常務の方が年収は高くなりやすい。
  5. 従業員数500人以上の役員報酬データは、中小企業全体には高めに出やすい。
  6. 業界別では、建設業・製造業・IT業などで役員年収レンジが変わる。
  7. 中小企業の役員賞与は、役位と業績、事前確定届出給与の手続きで大きく変わる。
  8. 役員退職金は、退任時の月額報酬、在任年数、功績倍率で変動する。
  9. 取締役の年収は、生活費や前職年収だけで決めるべきではない。
  10. 役員報酬は、原則として事業年度開始から3カ月以内に決める必要がある。
  11. 高すぎる役員報酬は、損金算入を否認されるリスクがある。
  12. 従業員給与との差を広げすぎると、組織の納得感を損なう可能性がある。
  13. 年収は額面ではなく、所得税・住民税・社会保険料を差し引いた手取りで見るべきである。
  14. 配当、社宅、退職金など、役員報酬以外の受け取り方も検討余地がある。
  15. 家族役員への報酬は、勤務実態と職務内容を説明できることが重要である。

記事作成にあたり参考にさせて頂いたサイト

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